Improvised Music from Japan / Tetsu Saitoh / Information in Japanese

往来トリオ CD「雲は行く」ライナーノート

曲目解説

文:斎藤徹

小山さん・林さんに選曲を任されている。2000年春のおーらいトリオツアーでは、多彩なリズムをテーマにしてみた。このCDに入らなかったボレロ・ワルツ・クッコリ・オンモリなどを含め細かく数えると15〜16種類のリズムを演奏したことになった。

  1. リア王復活のテーマ(斎藤徹)
    東向島の一万坪の工場跡地で、リア王を3部に分けて上演した劇団の音楽を担当した。これは第三部「復活」で、狂ったリア(若松武)の登場用に作曲。澤井一恵・板橋文夫らと毎晩このハバネラを演奏した。この録音では、途中からカンドンベに変わっていく。

  2. 69Q(アンソニー・ブラックストン)
    ある特定の音程感とタイトなリズムをもつ。途中で何回か繰り返される7種のリズムパターンは斎藤が付け足した。おーらいトリオ唯一の4ビートもの。

  3. オンバク・ヒタム / 琉球弧編(斎藤徹)
    東南アジアから琉球弧を経て、博多をかすめ韓半島に流れ、裏日本にたどり着くもう一つの黒潮。そんな海の道にとらわれている。これは、その中の琉球弧の部分。トゥラバマの一部がかすかに聞こえる。ゆったりした調子から5拍子、さらに六調になる。六調は熊本・鹿児島の労働者が奄美へ伝え、八重山に伝わったリズムと聞く。

  4. インヴィテーション(斎藤徹)
    ガルシア・ロルカの演劇用に作曲。生と死のシーン。当初沖縄・読谷村の城跡で上演予定だった。夜たいまつを持つ男子小学生のコーラスを想定して作ったが、上演はキャンセル。朋友バール・フィリップスが題名を付けてくれた。

  5. ビリンバウ(バーデン・パウエル / ヴィニシウス・ジ・モラエス)
    カポエラの伴奏によく使われるブラジルの一弦楽器の名前。踊りの練習に見せかけ、実は奴隷たちの武術の稽古だったという説もある。様々にプリペアードしたベースのイントロから2ビートに変わっていく。ブラジル音楽のアフリカンルーツをたどる流れを逆行したことになるのか。

  6. 雲は行く(斎藤徹)
    ハイナー・ミュラーの演劇用に作曲。精神病院内の患者たちの狂気の行進のシーンでトルコ軍楽隊を意識したメロディをいくつか作った。今回はその内の3種を使用。

斎藤徹 2000年8月


Last updated: October 10, 2000