富樫雅彦、山木秀夫 Percussion Duo コンサート(2002年2月23日鎌倉芸術館小ホール)のチラシに掲載
打楽器、特にドラムスの音色の美しさにおいてこの2人がいかに傑出しているかを、しかも図抜けて恐ろしいくらい傑出していることを伝えるのは百万の言葉を持ってしても不可能だ。静寂の中に打楽器の余韻が溶け入る瞬間がこれほどまでに豊かでセクシーだということをぼくらに教えてくれたのは富樫雅彦だし、無音を切り裂く瞬間の狂気と美を知ったのは山木秀夫がいたからこそだ。彼らとの共演は、わずか1音を出すだけで世界が変わってしまうような経験をすることでもあった。その2人が共演するというのは、わたしにとって大事件だ。ドラムスとは何なのか、音色とは何なのかを知りたければ彼らをこの目で見るべきだ。はやりの「リスニンク」や「音響」なんて言葉を使う以上は、本物の美しい音色が何なのかを自分の耳で知ることだ。CDでは絶対に駄目だ。彼らが空気を振動させる瞬間を、その振動を止める瞬間を、同じ空気の中で耳と体で感じること。音符や理論などでは決して見えてこない、ドラムマシーンや録音された音楽に慣らされてきた耳では聴き取ることの出来ない世界がそこにはあるはずだ。
大友良英
2001年10月 東京にて