Improvised Music from Japan / Yoshihide Otomo / Information in Japanese

磨滅する記憶

大友良英

今回の企画のために特別にプレスした500枚のLPを三週間に渡り、10台のターンテープルで回し続ける。LPの各面に入った音の記憶…A面には録音された歌が、B面には同じく録音された様々なノイズがコラージュされている…が、会場に置かれた10チャンネルのスピーカーで、ランダムにリミックスされると同時に、時問の経過と針の重さにより少しづつ擦り減っていく。全ての音は、空中に消えるのではなく、レコードの摩滅とともにノイズに帰す。歌を音楽を特別なものとして所有しようとした20世紀の試みが、デジタル情報の膨大な洪水の中に埋没してしまったように、レコードに刻まれた様々な歌声から、アバンギャルドな叫びやノイズに到るまでが同等に擦り滅り、ホワイトノイズの海の中に…静かに…いやいや、騒がしく沈んでいく。オープニングでは、このレコードにコラージュされた音源を使って大友良英(ターンテーブル)、松原幸子(サンプラー)のデュオ・サンプリング・ユニット、A-102のライブを。さらにこの時のライブ音源と、会場で使われた500枚の擦り減ったLPをあわせたダブルアルバムを制作することでプロジエクトは完結する。20世紀的なコラージュを'90年代的なサンプリングとリミックスの目を通して再検討すること。その中から見えて来る何かが、ホワイトノイズの彼方にある21世紀を垣問見せてくれるだろう。


会場:ジーベックホワイエ
神戸市中央区港島中町7-2-1ジーベックホール
期間:1997年6月14日〜7月6日
協力:ササキヒデアキ(記録ビデオ製作)


アナログ・レコード
録音:大友良英
サンプリング音源:Haco他
レコード製作:ジャパンオーバーシーズ、FMNサウンドファクトリー


Last updated: July 6, 1997