ランダムウォーク赤坂店にて 2007年3月12日より1ヶ月間開催
本の内容は一切問わず、大友さんが、今まで読んだ本の中で、みなさまに読んでほしい本を教えていただいた、ノンジャンル且つオールジャンルなブックフェアです。これを読むと、大友さんの音楽の秘密がわかるかも? あるいはもっとわからなくなるかも?この機会に是非ご来店ください。
30冊という話だったのに倍近い数になってしまった。そんんわけでよく読む時代物や漫画の類は最初から加えていない。基本的には自分の仕事に関係のあるものを中心にってことで。
● デレク・ベイリー『インプロヴィゼーション』
わたしの音楽の原点! この本だけは常時入手できるようにしてほしい。出来ることなら改訂版の翻訳もあわせて載せて再出版していただけないだろうか。文化や出版に携わるものの責務としてぜひお願いしたい。
● 高柳昌行『汎音楽論』
● 『間章クロニクル』
この2人の怖い文章に十代の頃に出会ったおかげで、オレの人生は大幅に変わってしまったように思う。今の時点で読み返してみると、否定的な部分も含め思うところはいろいろあるが、少なくと十代二十代の頃のオレにはとても魅力的に見えたのだ。
● 武満徹『私たちの耳は聞こえているか』
氏の文章を読むようになったのは20代も後半になってから。沢山の著作がでているけど入門編にいいと思いこの本を選んだ。高柳さんや間さんの怖い文章だけではわたしにはバランスが悪くて、武満さんの本が窓をあけてくれるいいきっかけにもなった。
● 副島輝人『日本フリージャズ史』
● 清水俊彦『ジャズ・アヴァンギャルドクロニクル19671-1989』、『ジャズ・オルタナティヴ』
● 植草甚一『フリ−・ジャズの勉強』、『ぼくたちにはミンガスが必要なんだ』
1970年代から80年代にかけてわたしがもっとも多く読んだジャズの文献は間違いなくこの3人。多分当時手に入った彼らの文章や雑誌への連載はほぼすべてチェックしてノートしたと思う。そのノートを持ってジャズ喫茶にいったりレコード屋にいって音源をチェックした。
● 江波戸昭『民衆のいる音楽』
● 小泉文夫『日本の音―世界のなかの日本音楽』、『音楽の根源にあるもの』
四半世紀も前のことになるが、江波戸昭教授の民族音楽のゼミに熱心にかよった時期があって、このころは自分でも信じられないくらい多くの文献や音源、資料をあさって勉強していた。挙句に在日のブラジル人のやっているサンバ教室にも通うようになり、実際に打楽器の勉強もしたり。それもこれも自分がやりたかった即興演奏やノイズを外の世界からも見たいと思っていたのが動機だったけれど、そんな動機はどこへやら。結局は音楽を楽しむ…という、もう当たり前すぎることを彼らに教えてもらったように思う。
● 佐々木敦『テクノイズマテリアリズム』
● 菊地成孔 / 大谷能生『憂鬱と官能を教えた学校』
● 飴屋法水『キミは動物(ケダモノ)と暮らせるか?』
●『音の力沖縄アジア臨界編』
● 平井玄『ミッキーマウスのプロレタリア宣言』
● 秋田昌美『ノイズ・ウォー―ノイズ・ミュージックとその展開』
● 魚喃キリコ『blue』
●椹木野衣『美術になにが起こったか―1992-2006』
わたしと同時代の…ってより、良く知っていたり、わりあい近いところにいる人たちの書いた本。まだ本は出ていないがここに北里義之の数々の文章を加えると、自分の歩んできた軌跡ともなんとなく重なってくる。彼らの仕事からは今現在も非常に刺激をうけつづけております。
● ローランキュニー『ギル・エヴァンス音楽的生涯』
● マイルス・デイビス『完本マイルスデイビス自叙伝』
● デューク・エリントン『A列車で行こう―デューク・エリントン自伝』
● ジョン・クルース『ローランド・カーク伝』
● チャールズミンガス / ネルキング『ミンガス―自伝・敗け犬の下で』
● 上田賢一『上海ブギウギ1945 服部良一の冒険』
大先輩の音楽家達の歩んだ軌跡ってのはどんな小説よりも面白い。
● 鶴見俊輔 / 上野千鶴子 / 小熊英二『戦争が遺したもの』
● 殿山泰司『三文役者のあなあきい伝』Part 1 + Part 2、『JAMJAM日記』
● 新藤兼人『三文役者の死』
● 小沢昭一『日本の放浪芸オリジナル版』
● 村松友視『トニー谷、ざんす』
● 村松友視『黒い花びら』
● 小林信彦『日本の喜劇人』
● 姜尚中『在日』
● 水木しげる『水木しげるのラバウル戦記』
● 水木しげる『マンガ水木しげる伝―完全版』(上、中、下)
● 足立正生『塀の中の千夜一夜―アラブ獄中記』
● 山田風太郎『戦中派不戦日記』
● マルセルデュシャン / ピエールカバンヌ『デュシャンは語る』
面白いのは大先輩の音楽家達だけじゃない。面白いなんて言葉で人の人生を片付けてはいけないが、こうして文章になっているさまざまな人たちの生き様や自伝、日記、インタビューを読むと、やはりとても豊かな音楽を聴いているのと同じような気持ちにさせてもらえる。本当にどれも面白い。ここから聴こえてくる、見えてくる世界の豊かさと貧しさと。しかしそれはさておいても、殿山さんや水木さんなんかの戦場経験のある人の文章を読むと素朴に思うのです。戦争なんて馬鹿馬鹿しいものはやめましょうって。
● David Toop『Haunted Weather: Music, Silence, And Memory』(Serpents Tail) ISBN-13: 978-1852427436 / ASIN: 1852427434
● Christian Marclay『Christian Marclay』(Phaidon Inc Ltd) ISBN-13: 978-0714843742 / ASIN: 0714843741
●『Blocks of Consciousness and the Unbroken Continuum』(Sound303) ISBN-13: 978-0955154102 / ASIN: 0955154103
(ここで入手可能 http://lilmag.org/?pid=2758719)
洋書からもいくつか。日本語以外の言語をもっと読めれば、世界は格段に広がるのにと思う。音楽に比べてなんと不自由な世界。僕らが知ることが出来るのは日本語という閉じた系の一部分にしかすぎない。クリスチャン・マークレイやSound303の本は英語を読めなくても十分に楽しめます。
● 橋本文雄 / 上野昂志『ええ音やないか』
● 大和定次『音作り半世紀―ラジオ・テレビの音響効果』
● 木村哲人『音を作る―TV・映画の音の秘密』
映画やテレビ、ラジオの音効さんの話は本当に面白いし、興味が尽きない。勉強させてもらってます。
● 鶴見俊輔『限界芸術論』
● 田中克彦『ことばと国家』、『ことばの自由をもとめて』
●橋本治『20世紀』、『貧乏は正しい』
● スーザン・ソンタグ『この時代に想うテロへの眼差し』、『良心の領界』
● E・W・サイード『戦争とプロパガンダ』
● ヴァルターベンヤミン『複製技術時代の芸術』
● 斉藤美奈子『文章読本さん江』
思想や哲学関係の本は、恥ずかしい話だが、意味がわからないものが多くて、読んでいるうちにすぐに眠くなってしまう。学生の頃から、なんとかまわりにひけをとるまいと、難しそうな本をいろいろ読んでみるのだが…いかんせんオレの頭の限界レベルが低すぎて…。先達に薦められたアドルノやホワイトヘッド、ベルクソンも難しくて、そのよさがいまいち理解できない。出来ないだけじゃなくて読んでいるうちに別のことを考え出して夜が明けてしまう。最近でも懲りずに、複雑系とかアフォーダンスに手をだしているけど、う〜〜〜〜ん、難しい。一番最近はまっているのは哲学ではないけど「超ひも理論」。これも全然わからない。わかりやすく書いた入門書を読んでもさっぱりわからない。わからないけど懲りずに手をだすのは、きっと子供の頃星空を見て宇宙の果てのことを考えて、自分はいったい何者なのかを考えるのが好きだったからだ。自分には全然わからない、手におえないことを考えているうちに、別のことを考えてしまうのがきっと好きなのだ。そうやって生まれる音楽のアイディアが結構あったりする。そんなオレですが、それでもわかりやすくて、勉強になった哲学思想書がこのへんの本。
● 若尾裕『奏でることの力』
● マリー・シェーファー『世界の調律―サウンドスケープとはなにか』
なんで世界を調律しなくちゃいけないのか? 調律って? マリー・シェイファーやポーリン・オリヴェロスといったサウンドスケープの発想や音楽療法的な発想を非常に面白いとおもいつつ、しかし一方で懐疑的でもある。目指す方向がなんだか立派すぎで、オレの中の直感が「ちょっとまてよ」信号を出してしまうのだ。オレはネオンやノイズに汚れた世界が大好きだ。駄目な人間も大好きだ。嫌いなのは権力的ななにか、宗教的ななにか、ご立派ななにか。だからシェーファーの世界は微妙な感じがする。しかし、そのシェーファーの本を翻訳した若尾先生にはまったく別の自由さを感じていてオレは大好きだ。彼との出会いがきっかけで広がった世界が今の自分を変えつつあるように思う。
● 辰巳渚『捨てる!技術』
数年前、レコードやCD,本や楽器があふれかえって生活すら出来なくなったオレのアパートの危機をすくってくれたのがこの本。以来コレクションの類は一切やめた。物理的に不可能だからだ。ペンネームだったんでまったく気づかなかったけど、著者は実は古い友人であった…ということに後になって気づいたというおまけ付。