Improvised Music from Japan / Yoshihide Otomo / Information in Japanese

大友良英のJAMJAM日記(99年6〜7月)

(フリー・ペーパー「Tokyo Atom」に掲載。)

@月@日
いや〜やっぱ東京は暑いっすねえ。皆さんお元気ですか? ここんとこツア ーやら、ユーゴの戦争やらですったもんだの日々だったんで、東京にもどってからはすっかりだれきってます。昼すぎににのこのこ起き出して、クーラーかけながらソーメン食って、そのあとはコンビニにいってあずきバー買って、家にもどってマンガかビデオ。で、暗くなる頃のこのこと楽器もってどっかで演奏して、でもって、そのあとはみんなで焼き肉でもつまみながら朝までうだうだして…なんてだらしない日常がもどってきました。あ〜嬉しい。もう勇ましいのはうんざりです。水木しげるばんざーい。帰国早々吉祥寺スターパインカフェでシカゴと東京のミュージシャンのオールナイトジャズセッション。ジム・オルークのギターソロには感動しました。でもこの日一番楽しかったのは、ステージ裏のうだうだとした時間。こんななんでもない時間がとっても貴重に感じる。疲れてるのかな?

@月@日
沖縄へ。浦添市にあるディープなクラブ "グルーブ" でソロGIG。我ながら良 い出来。沖縄は初めて。素敵な人達に沢山あうことができたのも収穫だった。18年ぶりにアマチュアバンド時代の仲間達にも会う。甲子園で優勝した沖縄尚学高校の副校長で三児の父になっているやつもいれば、ジャズクラブでベースを弾いているやつもいる。さすがに懐かしい。20年前彼らとミルフォード・グレイブス、デレク・ベイリー、田中泯のコンサートを見にいったことを思い出す。オレはめちゃ感動、彼らはちんぷんかんぷん。そのままオレはこっちの世界をひた走ってしまった。どっちが幸せだったかは誰にもわからない。いろんな人生があっていい。

@月@日
新宿PIT INNでNEW JAZZ QUINTETの旗揚げ公演。本格的にJAZZに挑戦するのは初めてのことだ。JAZZへの愛情を込めてあえて古めかしい名前にした。この20年JAZZが忘れてきてしまった、そしてオレが好きだった50〜70年代のJAZZがもっていた大切な何かに、今の耳でトライしてみたくなった。初演としてはまずまず。でも今の耳が納得する世界を作るには至らず。問題山積だ。がんばろ。

@月@日
バー青山で杉本拓、秋山徹次、中村としまる、Sachiko Mの徹底的に静かな即興ライヴをみる。背筋に悪寒が走るくらいの強烈な緊張感。スタイルこそ違うがここにはよかった頃のJAZZや、ノイズミュージックの持っていた大切ななにかがはっきりと息づいている。この感じを自分のNEW JAZZ QUINTETで出せればなあ。

@月@日
雑誌ユリイカの高橋悠治とフレデリック・ジェフスキーの対談を読む。ここのとこユリイカは本当におもしろい。この対談も素晴らしかった。考えを伝えるということ。暴力(戦争)のこと。そして音楽をつづけていくことの意味について深く考えさせられた。同じ号のピエール・アンリのインタビューも面白かった。テープミュージックの開祖ともいえる彼のコンサートをロンドンのクイーンエリザベスホールで先月見たばかり。ほとんど暴力温泉芸者を彷彿とさせるダンスミックスの2時間のステージが終わった時には千人もいた聴衆が、なんと百人になっていた。怒って出てく奴もアホなら、残って絶賛する奴もアホに見えた。きっとミルクでやったら皆踊り狂ったろうに。でオレはどう思ったかって。80才の現代音楽の大巨匠が踊りながらミキサーをいじって32チャンネルの巨大PAシステムをつかって900人もの客を失望させたんだぜ。リスペクトするにきまってるだろ。

PS:今日遠藤賢司さんのコンサート見てきました。すばらしかった。これについては次回書きます。


Last updated: July 24, 1999