みなさんこんにちは〜。すっかりご無沙汰してしまいました。お元気ですか?
今いるのはウィーンのエアポート・レストラン。ここで5時間ほど時間をつぶさなくちゃならなくて、それで半年振りにJAMJAM日記を書くことを思い立ちました。今回の旅はロンドンのLMCフェスでの50人もの素人からプロまでの音楽家との共同作業に始まり、その後はオーストリアのリンツ、アルス・エレクトロニカでソロを。で、これから行くのがヴェネチア・ビエンナーレ。ここでも同じくソロを。そのあとはローマのほうに行って、ソウルによって9月末に東京にもどります。
日記は昨年の12月で止まったままで、あとはぽつぽつ臨時号を出してただけなんで、今回どこから書こうか迷いましたが、さすがに半年以上も前のこは思い出せないんで、7月から。ちょうど偶然にもこの時期から集中して、音楽のプロではないいわゆる素人さんやら、あるいはわたしとはまったくフィールドの違うところで音楽をやっている人達との共演の機会が次々訪れて、これ単なる偶然には思えないのです。なにか次にわたしがやることのヒントがその中に沢山あるような気がして、そんなわけで、今回と次回はそのあたりを中心に書くことにします。
@月@日
京都大学、西部講堂。今日はここでDCPRGやblue bandなんかが出るフェス。あいにくの雨だけれど、沢山の人が来てくれる。屋台も出てたりしてちょっとした学園祭気分。オレは早々吉田屋料理店の出すピタパン屋の屋台に行ってお手伝い。別に献身的な気分ってわけじゃなくて、ここに行くと浴衣の女の子やら、浴衣ではないけどかわいい女の子やらがせっせと働いていて、男くさい楽屋より楽しかったのだ。そのうち今回からblue bandのメンバーになってくれた魚喃キリコさんやら、キーボードの江藤直子さんやらの美女チームも屋台に集まってきて、おまけになぜか岸野雄一さんまでが、突然東京からきて、ピタパン売りに参加。浴衣のSachiko Mもいたりで、ステージ並みに豪華だぞ、この屋台。さらには京都名物FMNサウンド・ファクトリーの石橋さん、パララックス・レコードの森さんといった毒舌中年も集合して、なんかすごいことに。フェスティバルのオフ・ステージのこんな時間も楽しいもんです。ピタパン屋台のメンバーにはblue bandでステージにも出てもらって演奏に参加してもらいました。これも楽しかったなあ。プロが逆立ちしても出せない、でも音楽の根源にある何か、みたいなもんがあって、それって魚喃さんのボンボの演奏にもあるんですよね。15年以上前にサンバをやってたころ以来、オレこの大切な何かをどこかに忘れてきたような、そんなことを思い出させてくれるステージでした。
もしかしてオレの参加は最後になるかもしれないDCPRGもホント楽しませてもらいました。ダンス・ミュージックはいい。ナルちゃんさんきゅ。コンサートの後は、みんなで恒例の吉田屋料理店へ。旨いメシと酒で明け方まで高校生のように大騒ぎ。下戸のわたしもジャワ・ティでべろべろに酔いました。オトナの学園祭みたいな1日。主催の田村さんをはじめスタッフのみなさん、いろいろありがとう!
@月@日
山梨県白州。ここでコンサートと3日間のワークショップ。正直いうと、山も大自然も、田舎暮らしも苦手で、だから白州に行くのもちょっと億劫だったのだけれど、行けば行ったで楽しいことは結構ある。最初に見つけた楽しみは、白州フェス特設のカフェ屋台に入り浸ること。コーヒー一杯50円。パンケーキも50円。いくら注文してもさいふに気を使う必要ないし、ここの屋台の女の子たちも、みんなかわいくて…、え〜こう書くとですねえ、硬派のはずの大友さんが、最近ちょっと変なんじゃないですか…みたいなこと言われそうですが、というか事実言われるのですが、う〜ん、へんかなあ? もともと硬派でも軟派でもないんだけど…、世の中がどんどん勇ましくなってるので、オレは何が起ころうと勇ましくならないようにしようと思ってるだけなんすけどね。
おっと、今回の使命はですね、カフェ屋台に油を売りに来たわけではなくて、まずはコンサート。野外の100メートル近く離れたステージ上に秋山徹次、中村としまる、Sachiko M、それに私が配置し、その中をお客さんは自由に移動しながら音楽を聴くという趣向。としまるやSachiko Mの音域と虫の音がほとんど同じ周波数でモジュレーションしあっていて、その様子はちょっと言葉にはならない独特の世界。こういう距離のあるところでのアンサンブルは今後もいろいろとやってみたい。京都のフェスの時のスタッフも何人か見に来てくれる。なんかこういうつながりはいいもんです。途中わたしのソロのところではダンスの田中泯さんも参加。もう身震いするくらいのオーラ。すげえや。
@月@日
白州ワークショップ3日目。今回参加してくださった人たちは普段楽器を手にしたことないような人たちがほとんど。八百屋さんもいれば地図を作ってる人、家族連れもいれば、甲府方面で音楽を作ってる青年もいたり、普段あまり接する機会のない人たちで、それだけでも面白い。連日聴取のワークショップや、ちょっとした作曲作品みたいなものを持ち寄った楽器でやったり。で、最終日の今日は、その彼等彼女達に作曲してもらって、それを皆で演奏することにした。これが予想に反してとっても面白かったのだ。奇作といえそうな作品から、結構正統派の作品まで、みなそれぞれに工夫してくれた。みんなで雨の音を模倣する作品なんて、まじで感動したんですから。どの作品も、なにより演奏から楽しそうなオーラみたいなもんが伝わってくるのが素敵でした。そもそもわたしのワークショップには専門家とか即興演奏家を育てよう…みたいな意図はいっさいなくて、専門技術がなくても、これまでアバンギャルドと言われるような領域の専門家が独占的にやってきたような音楽のアンサンブルをやることは出来るはず…というあたりから発想している。それを人に聞かせて金を取ろうって意図さえなければ、わりあい簡単に、参加している人が充分楽しむようなアンサンブルを組むことは可能だとわたしは思っていて、そういうことを非音楽家とやってみたい…というのがもともとの意図なのだ。そもそも修練を積んだ音楽家や聴き手にしか門が開かれてないような音楽だけで成り立つような音楽の世界があること自体に違和感があるし、そういう世界の住人を20年近くもやってきて、いいかげん、閉じた世界の価値観だけで判断しがちな自分に嫌気がさしてきた。ワークショップを始めたのは、なにより、自分のそうしたあり方を考え直す機会をつくりたかったからだ。一朝一夕でどうこうなるとは思わないけど、少しづづね。そうやることが必要だって今は強く思っている。
そうそう、今回白州で世話になったボランティアのみなさん、ありがとう。なんか、いい感じの友達が沢山出来た感じで、嬉しかったです。食堂でのわいわいした時間、カフェでの時間、これも音楽と同じくらい重要ですよね。
@月@日
広島県甲奴郡総領町。ここも白州に負けず劣らずの田舎町。さすがになれてきたとはいえ、ネオンのないところはね、なんか寂しいっす。今度は廃校になった小学校に3日間泊まりこんで数十人の参加者とともにワークショップ。音楽療法の専門家でもある音楽家
若尾裕さんの企画で毎年行われているクリエイティブ・ミュージック・フェスティバルで、今年は6回目になるらしい。参加しているのはDJ っぽいなりの高校生から、各地の教育学部や美術音楽系の大学生、地元の音楽教室の先生から大学の先生に至るまで。音楽の専門家から、楽器をやったことのない人まで、さまざまなスキル、年齢の人たちと教室に雑魚寝の3日間。田舎が苦手のわたしが参加したのは前述の理由のほかにもうひとつ、若尾さんの著書「奏でることの力」がすばらしかっからだ。ここには専門の音楽療法やマリー・シェーファーに関することのほかに、スクラッチ・オーケストラやらデレク・ベイリーなんかの即興演奏のことまで出ていて、そのへんのことを若尾さんが実践している姿をこの目で見たかったからだ。(実はこのワークショップから2週間後の、先週の週末に、まさにスクラッチ・オーケストラの初期の中心メンバーだったAMMのキース・ロウと一緒に、スクラッチ・オーケストラの現代版のような実験をロンドンで3日間にわたりすることになるのだけれど、これについては次回に)
@月@日
ダンスの服部ちこさん、伊藤真喜子や、音楽教育家の山田衛子さんのワークショップを交えつつ、夜は花火をやったり酒盛りになって、告白タイムになったり、老若男女の友達も出来て3日間はあっというまでした。予想どおり、若尾さんの独特の存在が、素晴ら
しかった。いるだけで、こうなんというか、音楽が聞こえて来るような人でした。肝心のわたしのワークショップはというと、これも個人的には沢山の成果がありました。身体のこと、時間軸にそった変化のこと、リズムのこと、ゲームのこと、そして聴取…今まで自分が経験してきたばらばらの音楽的な出来事が渾然一体となっていく中で、何かがつかめそうな、でも先は長いような。音楽ってなんだ、とか、踊るって…とか、楽しむってなんなんだ…とか素朴なことをずっと考えながら、でも何より自分自身が一番楽しい時間をすごさせてもらったような気もします。参加者の中には驚くくらいのおもしろい音楽的なアイディアでCDまで出している音楽大学の先生もいれば、もうかわいい
…って言葉しか出ないオレの半分の年齢の女の子まで。オレは教師とか先生みたいな立場の人間にはなる気もなければ、なれもしないけど、でもオレが楽しんだぶんだけ、彼等彼女等もなんか見つけてくれればなによりだな〜なんて、ちょっと先生風に思ってみたりして。みんな、またどこかで遊びましょうね。
@月@日
広島の廃校になった小学校から京都へ。夜は京都の素敵な友達数名とスペイン料理。いかすみのパスタ・パエリアの旨いこと。やっぱ、先生やってるより、不道徳な都会で音楽やって、わるい友達とわるい相談をしながら旨いもん食って、わいわいとキリギリス
みたいに生きるのがいいや(苦笑…え〜、蟻とキリギリスの話の、あの音楽ばっかりやってるキリギリスのことね)。明け方近く、三条のホテルへの帰り道、京都の街をとぼとぼ歩きながら、きらきら光るイルミネーションの海に抱かれて”ほっ”と幸せな気持ち。明日はアンデパンダンでGROUND-ZERO時代からの朋友で、最近突如刺青をいれた男ナスノミツルと共演。その後は東京にもどって、やっぱりもう朋友というか腐れ縁というかの芳垣安洋とライブをやったり、これまた、もうオレの映画人生の最大の功労者にしてダメダメ親友の筆頭安藤尋監督のエロVシネ『高校教師、飼育の教室』(blueのあとにこれだからね、しかもこのタイトルなのに、SMもなけりゃ、からみもちょっとで、このビデオで抜ける人はあんまいねえんじゃねえかな。もう安藤監督あんたはすげえ!)のサントラをギター1本で1日でやって、で、いよいよ怒涛のロンドンに突入です。この続きはまたすぐに。
と、ここまで書いたらヴェニスに到着。ホテルから見える月と火星がとっても綺麗です〜。