Improvised Music from Japan / Yoshihide Otomo / Information in Japanese

大友良英のJAMJAM日記(98年5月)

(フリーペーパー「Tokyo Atom」に掲載。)

@月@日
松原幸子とオレのDUOプロジェクトFilamentのアメリカ東部ツアーも8日目。ここで山口のサブリミナルドラマーの一楽義光と合流、3人で立ちあげたばかりの新バンドI.S.O.のアメリカ初公演をシカゴ、ラウンジAXでTV-POW、ジムオルークとともに行う。 会場の熱気がすごい。シカゴの即興シーンの人達とは、今後じっくりと深い付き合いになる予感。ここには本当にピュアで素敵な音楽を作る人が多い。次回はもっと長く滞在したい。ジムは僕らと共演するためにわざわざヨーロッパから戻ってきてくれた。ありがとう!

@月@日
わずか3日でシカゴを離れ、オーストリアのウィーンへ。シカゴとウィーン、今一番私が注目する音楽シーンのある2都市でI.S.O.の連続GIGをやるなんてチト不思議。ここでは電子音系のメゴレーベル関係の人が沢山見にきてくれる。オレはこの人達の仕事が好きだ。こことの縁も深くなりそう。オーストリア人なのにDJ-タケシを名乗ってるやつがいて、彼のDJがめちゃくちゃかっこよかった。後で話を聞いたら、オレの影響を受けて始めたなんて嬉しいことを言ってくれる。そんなこと言われたら気を良くするじゃねーか。でも間違いなく、奴のほうがすごかった。ちくしょうめ! 今に見てろよ。

@月@日
フランス最大のニューミュージックフェス"ムジークアクシオン"会場に到着。ここでスイスのヴォイスクラック、ギュンターミュラー、フランスの即興フィルムコラージュユニット、メタムキーネのジョイントセットにいきなり出くわす。身動き出来ないくらいの衝撃。一楽、松原も涙をためて感動している。文字で内容が伝えられないのがもどかしい。ごみためみたいな世の中だけど、宝は存在する。

@月@日
ムジークアクシオン11日間の大とりでFilamentとI.S.O.が出演。つまらないとさっさと会場を出てしまうここの厳しい客達を1時間完全に釘ずけにしてやった。オレの大好きなフランス最強のノイズターンテーブル奏者Erik-Mがステージに駆け寄ってきて大絶賛してくれる。うれしい。その一方で、なんで以前のような演奏をしないのか文句を言う客も。過去の自分をコピーする気なんてオレにはさらさらない。家に帰ってGROUND-ZEROでも聴いてろ。もちろんオレは大成功を実感。メタムキーネのジェロームの一言「あなた達の方向はまちがってない」をオレは信じる。直後に松原には来年の出演依頼まで飛び込む嬉しいおまけも。

@月@日
ロンドンのブリクストンに出来たばかりのLMCスタジオでI.S.O.セカンドアルバムの録音。3人対等の完全な即興でいきなり、2トラックに落としつつレコーディング。3人ともスピーカーから出てくる微細な音の変化に細心の注意を払いながら、一切やり直しなしで、4曲CD1枚分を録り切ってしまう。ディスヒートや、レコメン系の録音を数々手がけてきたエンジニアチームとのコンビーネーションも最高で、グループの状態もライヴを重ねつつどんどん良くなってきている。聴き返しながらスタッフともども狂喜しながらの自画自賛。ずーっとやっていたいくらい、聴いていたいくらい気に入る。1枚目とはすでに別のバンドに進化していることを実感。自分たちの音にこれだけ新鮮な感動を覚えたのは初めて。こうしたいって像があってやってるのではなく、自分達でも見えぬなにかに向かい合って、音を出しつつ聴き、また音を紡ぎつつ…を繰り返しているとでもいったら良いか。自分達の知らぬ、もしかしたらまだだれも見ていない領域にぼくらは入りこみつつある。この後はパスタの旨いイタリア珍道中になるのだけど、これについてはまた次回に。


Last updated: October 17, 1998