Improvised Music from Japan / Yoshihide Otomo / Information in Japanese

大友良英のJAMJAM日記(99年1〜2月)

(フリーペーパー「Tokyo Atom」に掲載。)

@月@日
吉祥寺スターパインカフェで Phew+山本精一のライブを見る。彼らのCD『幸せのすみか』の力の抜け具合と、底知れぬ深い世界、そしてなにより音楽の素晴らしさには心底ガツーンときたけれど、この日の演奏も最高だった。たった一声で、ほんのギターの一音で世界を作ってしまうってのは、本当にすごいことだ。素直に感動した。

@月@日
ミルクであこがれの風俗探偵明ちんさんに会う。すごい男前、その上いいムード。なんかドキドキする。この人だったら風俗の人が心を許すのもよくわかる。カッコいいっすよ! L?K?O や TOKYO ATOM のルリさんマークさんも交え楽しいひととき。そうそうこの日は明ちんさんの誕生日。"HAPPY BIRTHDAY!"

@月@日
渋谷クアトロにジム・オルークを見に行く。このコンサートもほんと、素直に感動したいいコンサートだった。バックをつとめた日本のメンバーの演奏もとても良かった。会場にはウイーンのメゴレーベルの連中や、フランスレコメン界の巨人フェルディナンの姿も。東京のミュージシャンも沢山いて、ロビーは社交場のよう。お客さんも沢山きていた。 突然会場で声をかけてきたお客さんに、先日新宿 ICC でやったメゴのコンサートについて聞かれる。彼にとっては、メゴがラップトップコンピュータで音楽を作ってることがどうも面白くないらしい。なんだかすごい昔、オレがターンテーブルをやりだした頃に、こんなのは楽器じゃないって文句をずいぶん言われたことを思い出す。そんときオレは思った。楽器だろうと楽器じゃなかろうと、どうでもいいって。オレはオレの理由で音楽を作ってるんだから、あんたの理由とあわなければ、聞かなきゃいいだろって。あんたの理由にあわないからって文句をいわれる筋合いなんてどこにもない。彼はメゴは認めないなんてさかんにいきまいていたけど、なんだか人種差別の人の意見をきいているようで薄ら寒くなった。コンピュータをつかってないオレが賛同してくれると思ったのかなあ。少なくともオレは、その人がその人の理由でなにかを作ろうとしている事には常に敬意をはらいたいし、新しいことをやろうとしている人に対して、認めるとか認めないなんて傲慢ないいかたはしたくないと思っている。嫌いなら静かに会場を出ればいいじゃん。好きな人だっているんだからさあ。はっきりオレが認めたくないのは他人の創作の自由を奪うような発想と自己保身の権威主義に対してだけだ。そういえば、この日もジムはラップトップだけのソロで20分間、素晴らしい音楽をつくってた。コンピュータだろうがギターだろうが好きなもんで音楽をつくればいい。いつだって音楽は開かれてるし、自由なはずだ。

@月@日
高橋悠治さん、高田和子さんらが作った邦楽器のユニット「糸」のリハーサル。オレはプレイヤーとしてではなく、作曲家として1曲書かせてもらった。慣れないことなんで、なんだか演奏するより緊張。現代音楽や現代邦楽の巨匠達のリハはさぞや厳しいもんだろうと思っていのだ。でも行ってみたら和気あいあいと楽しい雰囲気。みんなとても暖かくってホッとする。悠治さんの力の抜け具合が、山本精一や明ちんさんにも通じる感じで素敵だった。ほんと、開かれた人達にとってはジャンルなんて関係ないなって、こういうときにつくづく思う。普段あまり聴くことのない邦楽器の音がとっても新鮮で美しい。別に曲なんかやってなくたってリハーサルルームにある音達のざわめきだけでもキラキラしてる。昔は邦楽器の良さなんて全然わからなかった。宝物はいつだってどこにだってあるけど、それを宝物だって分かるのは自分自身の人間力なんだよなあ、きっと。出会いはいつもとっても素敵だ。この人たちとは長い付き合いになりそうな予感。


Last updated: February 17, 1999