Improvised Music from Japan / Yoshihide Otomo / Information in Japanese

大友良英のJAMJAM日記(2000年2月)

(フリーペーパー「Tokyo Atom」に掲載。)

@月@日
つくば市"アクアク"で韓国のパーカッション奏者パクジェチュン、Sachiko Mとのトリオ。パクさんとは初共演。彼は椅子を使わずに直接下にあぐらをかき、そのまわりにドラムや韓国の打楽器をならべる独特のスタイル。見た目も独特なら、音も独特で、パワフルでいながら繰り出されるひとつひとつの音の響きの美しさは、まったく独自のものだ。一緒に演奏していておもわず聴き惚れてしまった。まったく動かないSachiko Mとは対照的。僕らのエレクトロニクスとパクさんの豊かなな響きが、聴いたこともない世界を作り出して行く。即興演奏が輝くのはこういう時だ。この日はお客さんも独特で、そのほとんどがつくばの大学生。終演後の打ち上げも楽しかった。マスターの野口さんがまるで引率の先生に見えた。1979年以来21年活動してきたアクアクは、諸般の事情で年内に閉店。その最後の1年の始まりということで特別に僕らを呼んでいただいた。おかげで良い演奏ができた。79年といえばオレが東京に出てきた年だ。アクアクのみなさん長いことご苦労様。今後の活動にも期待してます。

@月@日
ハイスピードのミズヒロくんから久々の電話。宝島社のTV-CFに使われる彼のアニメに音楽を付ける仕事の依頼。アニメーション作家は彼の知られざるもう一つの顔。多彩な人なのだ。内容も面白くなりそう。CFは未経験だけれど受けることに。

@月@日
ミニコミの "エスプレッソ" 主催のイベントで杉本拓とギターデュオ。彼とやると本当に自由になれる。次回はアコースティックのギターデュオでいきたいな。他にも沢山の若いミュージシャンが出て、全部見たかったのだけれど仕事が立て込んでて早退する。残念。ところでさ、こういうイベントにオレと同世代の評論家ってほとんど顔をださないんだけど、それってどういうことなんだ? そのくせ若い人たちのやっていることに批判的なことをオレの前で平気でいいやがる。完成度がない…とか、こじんまりしててとか言ってるお前さ、当たりめーだろ。まだまだ始めたばっかりなっだからさ。そんなことより彼らが持っている可能性が見れないのかよ。すでにあるもんを評価するだけになった人間をオレは保守主義者と呼びたい。

@月@日
スタジオにこもってミズヒロCFの音楽録り。プロデューサー諸氏が居並ぶ中クラシックの弦セクションの人たちから譜面のミスを指摘される。あれま。オレの譜面はいつもミスだらけでミュージシャンに迷惑をかける。せっかく初めてお会いするプロデューサー諸氏の前でいいとこ見せようと思ったのに、すぐ地が出てしまった。うそはつけねえや(苦笑)。深夜まで編集。わずか30秒の音楽とはいえ、手間は短編映画の音楽を作るのとそんなに変わらない。やっぱり映像の仕事は面白い。

@月@日
中野のウィークリーマンションに滞在するパクさん夫婦にまねかれ昼食。奥さんの作った韓国家庭料理を堪能したあと、大泉学園の"in f"へ。ここでアクアクのトリオに箏の西陽子さんも加わってのライブ。この日の演奏もそのままCDにしたいくらいの出来。英語、日本語、韓国語が飛び交う楽しい打ち上げ。韓国語が40%の比率で飛び出すパクさんの会話がなぜか8割がた理解できる。"in f"のおでんは実に旨い。いい演奏と素敵な仲間、そして旨い飯があれば幸せだ。

@月@日
長い英国生活を終え昨年帰国した天鼓さんと久々の東京での公演。この日も パクさんがゲスト。天鼓さんといえば80年代の"水玉消防団"に始まり、"ハネムーンズ"やフレッド・フリス、ジョン・ゾーンとのコラボレーションなんかで誰にも似てない強烈なヴォイスを聴かせてくれ、オレはとっても刺激を受けたミュージシャン。アラーキーが写した彼女のどアップのインパクトある写真が記憶にある人も多いんじゃないかな。竹を割ったような気性も気持ち良い。この数年はもっぱら海外で共演することが多かった。帰国して半年、彼女は東京で即興ヴォイスのワークショップを始めていて、そこに集まった17名で作ったヴォイス集団"KUU"を結成。この日はその披露目も兼ねていた。天鼓さんのヴォイス同様、このクループの音楽も、今まで一度も聴いたことのない世界。この先が楽しみ。打ち上げで熱く語る天鼓さんを見て、なんだか嬉しくなってきた。

PS 先月あれほど熱くなって書いた自作楽器の出来栄えは、う〜ん65点ってところかな。まだまだ自分の機械になるのには時間がかかりそう。


Last updated: February 15, 2000