Improvised Music from Japan / Toshimaru Nakamura / Information in Japanese

CD ライナーノート

The Improvisation Meeting at Bar Aoyama

文:中村としまる

1998年10月より始めたバー青山での"the improvisation meeting at bar aoyama" が10回目を迎えて、毎回録音されていたものも10本のDATのテープとして、主催者であるところの杉本拓・秋山徹次・中村としまるの手元に重ねられた。それらを聴くにつけ、「いいね」、「出したいね」という声が出て、「どうせほうっておくとこのまま誰かがなくしたり、なんか重ねて録音して消しちゃったりとかね」、「うっかりっていうんじゃなくても、お金がなくて新しい生テープ買えなくて、しょうがなくってことも起こりそうだ…」、「それはかなり高い確率で起こりうるね」、「お金ないからねえ」…、ということで半ば緊急な事情で発表することが決まった。これで我々は、あの10本のテープを再利用することで、新しいテープを買う必要からしばし逃れることが出来るのである。しかも再利用、リサイクルである。エコロジイ・コンシャスである。セイヴ・ジ・アース。

さて、演奏者を簡単にご紹介したい。はじめに主催の3人は、杉本拓(ギター)、秋山徹次(ギター)、中村としまる(ノー・インプット・ミキシングボード)である。ノー・インプット・ミキシングボードは、外部音源を入力せず、ミキサー内部のフィードバックをコントロールして演奏している。この3人は、国内や海外出張演奏中でない限りすべての夕べに参加している。では、曲順に沿ってゲストを紹介したい。1曲目は秋山・杉本・中村に、ホアヒオ、フィラメント、I.S.Oなどで活躍するSachiko M が加わっている。彼女はサンプル音を用いないサンプラー演奏家で、サンプラー内部に内蔵されたオシレーターから発音されるサインウエーヴのみを演奏する。2曲目にはユタ川崎。こわれ(かかっ)たアナログシンセを演奏する。3曲目ではジェイスン・カーン。中村としまると"リピート"というグループをもっている。録音された当時は来日中であったが、現在は在日中。4曲目はショーン・G・ミーハン(ドラムス)、大蔵雅彦(サックス)が加わっている。ミーハンは、ニューヨークをベースとするドラマー。大蔵は、ヌー(Gnu)を率いる。5曲目はガジ、サーモなどのバンドでギター、ドラムス、サウンドデザイン、と多彩にぶっ飛ばしている君島結のソロ。サーモは須藤俊明の演奏するドラムスにマイキングし、君島がそれをステージ上でエフェクトしミックスするというデュオである。6曲目では大蔵雅彦と東哲也の、中村・杉本との演奏が聴かれる。東は、藤井郷子オーケストラや、weedbeatsで活動するトロンボーン奏者。7曲目は杉本拓とジェイスン・カーンのデュオ。8曲目は大友良英がギターを弾いて、秋山・杉本とともにギタートリオになっている。9曲目から11曲目までは、中村、秋山、杉本の順でそれぞれのソロが並ぶ。12曲目は、ベルリンからアストロ・ペリルのギタリスト、カイ・ウルフを迎えている。ヨーロッパでは、中村とダンサーやゲストミュージシャンを交えたプロジェクトでも演奏しているが、ここでは秋山とのギターデュオを収録した。13曲目にはサックスの岩崎まさきと、前述のサーモから須藤俊明が加わっている。14曲目は再びジェイスン・カーン、最後の15曲目はSachiko M が加わった演奏を収録した。

本当に駆け足での紹介にとどめた。僕は実際に"駆け足"した場合にはこんなに速くは走れない。さて、例の10本のテープの再利用の使途は、このあとにも続くバー青山でのライヴ・レコーディングかな? 11回目〜20回目をCDとして発表できるかどうかはまだ分からないけれど、それはともかく、一度会場に足を運んで下さいまし。毎月の第一水曜日21:00〜、渋谷駅徒歩10分、六本木通り青山トンネル渋谷寄り入口付近のドアです。


Last updated: October 25, 1999