Improvised Music from Japan / Seiichi Yamamoto / Information in Japanese

想い出波止場 USA CIRCLE

バッタのたましいここに極まれりの巻
ニューヨーク〜サンフランシスコ・ツアー・ダイアリー
山本精一

 ぼくたちは、3月の21日、3度目の米国ツアーをするために、ニューヨークに着きました。飛行機で。12時間の長旅で、疲労困憊のぼくたちは、でも、空港の出口から出るとウソのように元気になりました。そして、ああ!これがニューヨークか!ここがオルタナの大本部か!という感激の声を上げて空を見ると、うわ-、これまたニューヨークの夜じゃないですか。「マンハッタン。」横でつぶやく、今回の助ッ人ドラマーの大串氏。チュウはこのツアーには同行しなかったのです。

 想い出は、今まで3回アメリカツアーをしていますが、ニューヨークは初めてで、とても嬉しかった。ああ、生きてて本当によかった、人間日頃から良い事はしとくものだと、3人手を取ってうなづき合ったものでした。ニューヨークで3回、サンフランシスコで2回の計5回のショートツアーに、ぼくたちは火の玉のようになってブチ当たろうと誓いました。あんまり気合いが入っていたので、ベースの津山氏などは、競馬へ行こうとした程です。

 ライヴ初日の3月23日は、CBGB!のトナリの " CB' s ギャラリー" という、アートスペースのようなところで演りました。ここは、まァフリースペースというか、色々なジャンルの音楽家が、フラリとやって来て、スラリ、またはヌラリっていう感じでイキな演奏をするところで、客もリラックスして見ていてイイ感じなので、おもわず「イイじゃないか!」って声に出して言ってみた。

 対バンのセッションバンドの人々に、ドラムを借りたのでしたが、このバンドのドラマーは、ダギーボーンという大変出来た方で、その後も、いろいろぼくたちの面倒を見てくださいました。

 演奏の方はというと、現在、ニューヨークに住んでいらっしゃいます白石民夫氏が、サックスと唄で参加して下さいまして、大変すばらしく、ワケの分からない奇怪なライヴを客様にお聴かせすることができたのです。ワーイ。エー?

 さて、2回目24日は倉庫街に有る「クーラー」っていうクラブで。何か、魚とか、肉とかの死体の匂いがする。対バンは、エリオットシャープさんのユニット。ノイズ? いやフリーフオームか。何か良く分からなかった。

 ここでのぼくたちのライヴにも、再び白石氏が参加して行ったのですが、またまた良かったのです。ピキーッとかチューッとか、とてもサックスと呼ぶには変すぎる音は、氏独特のモノです。曲は、新曲を多くやりましたが、サウンドガーデンに憧れて作った曲が上手くできて嬉しかった。ブルータルトゥルースのケビンやダンが、キレーなネーチャンを連れて来てくれて、クソーッと思いまして、「許さにゃいーッ」と叫びましたが、キョトンとされてしまいました。ぼくたちはダメなのでしょうか? 皆どう思いますか。

 3日目の26日は、ああ、あのニッティングファクトリーです。ニューヨークアヴァンギャルドの殿堂なので、ぼくたちは、ムネドキでドアを開け中に入ると、ギャフン。ありりりりり? 何でしょう? これは? 客席にはテーブルが、整然と置かれ、その上には、詩のようなモノが。そして、何だ何だと思ってると、何やら怪しげな「前衛映画」が上映されるではありませんか。ほんでね、途中からナマで、ピアノとドラムの即興演奏がシンクロしてくるという趣向。客はと思って見ると、スゴイのこれが。平均年齢40ってとこか。とてもこの方々が、ぼくたちのイージーリスニングなライヴに耳を傾けて頂けるとは思えなかったので、「アギョーッ」って思った。

 でも、それは心配なかったの。その人たちみーんな映画終わったら帰っちゃったの。でね、お客ひとりも居なくなりました。ぼくたち3人、目から涙を出して、「ああ、我々は何をしにここへ来たのダ、一体人間は、どこから来てどこへ行くのか」なんて、楽屋で哲学しているところへ、ジョン・ゾーン氏が来て「お客ケッコウ入ってるヨ」というので、ステージから客席を見ると、いつの間に集まったか、ソコソコ入ってる。オロロ〜ン。ぼくたちは再び手を取り合い、生きるって素晴らしいと思ったことでした。あっライヴは、まあまあ良かったです。でも、なんか、鑑賞されているようなカンジでやりにくかった。

 次の日のオフは、買いモノ上手のぼくたち、ニューヨークの「バッタ街」キャナル通りを完全制圧いたしました。バッタの精神ここに極まれりというようなステキにうさん臭い店に行き、かたっぱしから万引きを重ねまして、大成功だったワケです。日本人の本質はカッパライに有るということなのです。

 あ、そうです。26日の朝、ニュージャージーに行って、ジャドフェアー氏の新バンドのアルバムに、ぼくたちは参加しました。しかし、その時の曲が、とても良い出来で、少し勿体ないなと思い、「返して下さい」と言おうかどうか悩みました。2曲ほどセッションという形で入る予定です。でもとても面白かった。ジャド氏はやはり非常に才能豊かです。

 飛行機でピューと行くと、そこは、サンフランシスコです。ここはスゴイよ。アシッドっていうイメージよりも、端的に言って、ドきちがいの街ですよ。ぼくは、とてもホッとするんです。

 ここでの初日は28日。場所は、ダウンタウンからちょっとはずれたところに有る「DNAラウンジ」というクラブ。今回サンフランのブッキングは、"スリーデイスタブル"のブレントっていう人物なので、対バンがものスゴイ。ジャーン、ファクストヘッドだったのです。おのろいたかア! いやァそのライヴの凄いこと。もう、どう書いていいやら分らない程です。四角いダンボールに、グラフやら三角の旗やらを付けたモノを被って、エゲツないファズトーンをビビビンとぶちかます、異様なべーシスト。超長頭のギター、タイコは、未来派っぽい白ヘルを被って、デスメタリックなビートを繰り出している。そしてボーカルは、ホータイをめちゃくちゃに巻いて顔は全く見えないし、手足はギプスで長く伸びていてほとんど動けないので車イスに乗ったまま。その状態で、デス声で叫び、うなり、暴れるため、車イスからよく落ちるのを、必死に助け、時にはドツキ回す、気ちがいナース(この娘は本当に可愛い)。さらにそれらをサポートする「メタルクルー」がアホで、完璧なデスメタルのパロディーを演じる。マジックで腕や体にメタルのボーカリストの名前を書いて、狂ったようにヘッドバンギングを続ける長髪、レザージャケ、グラサンの男。モニタースピーカーに貼りつけた曲目表が、はがれ落ちる度に拾って、再び貼りつけるという動作を、ワザと、60回以上も繰り返し、デビルサインを送り続ける血まみれの兄ちゃん等々、5〜6人のこれらマッドクルーに支えられ、ファクストヘッドの狂乱のバカデスメタルショウは、ますます光り輝くものでした。あまりのめちゃくちゃさに客席はボーと見ているだけです。

 このあとに、もう、少々の事をやってもダメだと悟り切ったぼくたちは、割とマジメにノイのカバー等を交えながら一所懸命ライヴを勤めました。良かったです。この日は本当に楽しかったと思いましたから。

 29日、「ナイトブレイク」。ここは去年も出ましたが、その時は名前が「サースティスウィード」と言っていて、ノイズヴァイオリン弾きの、ミス・マーガトロイドが、スタッフで働いていました。ここでの対バンも、強力で、「ラバールーム」っていうキャロライナーのグラックス一押しのシスコのど変態バンド。あら? よく見ると、元トラジックムラトー、現マッドウィメンのバンビがドラムで、ギターがクロームの人、シンセが、ミスターバングルの人だ。だから、スーパーバンドなのだが、ステージはめちゃめちゃです。ボーカルの太っちょさんは、ワキ毛を焼いたり、ガアーッとか叫んだり、のしのしただ歩いたり、サッパリ意図がわからないし、バックの音も、メタルみたいで、かっこ良いんだけど何か、とても変で、脱骨したみたいで、私は大好きでした。グラックスも見ていて、「ニャオニャオ踊り」というのを踊ってました。猫のマネして踊るだけなんです。

 次のスリーデイスダブルは、今までの彼らのステージで一番凄い出来でした。キャプテンビーフハートが、宇宙ステーションで演奏しているような、摩可不思議な変態サウンドもさることながら、この日はボーカルの人が完全にキレて、天井からブラ下がり、カメレオンが、エサを食べる時のマネをしたり、客席で、発狂したようにモッシュしたりしながら歌いましたです。このバンド日本ではあまり知られてないですが、ホント大変おもしろく、音楽的にもグーなので、もしCDを見つけたら、即買いましょう。

 とうとうぼくたちの、今回最後のショウがはじまりまして、ぼくたちは、とても楽しく曲を演奏できました。あまりにも嬉しくて、キャアキャア言いながらやりました。ノイのマネしたり、ザッパのマネしたり、キムゴードンのマネしたりしました。津山氏もキレて、コロンコロンとステージを転がり続け、自己完結しました。7/13、9/11、6/7、3/8と目まぐるしくリズムチェンジする、レニートリスターノ風前衛ジャズでラストを締めると、アンコールがかかりまして、楽屋から戻ってくると、ウヘッバスドラの上に、生のお魚の首が置いてある。誰でしょうか? サンキュ。

 ああアメリカ。ニューヨーク。サンフランシスコ。JAZZ。エレキ。サボテン。これでツアーも終わりなのです。ぼくは帰りの飛行機の中で、アメリカと、もう一度戦争をして、ぜひ勝ち、日本の領土にしてしまいたいと、心の底から思ったのです。天皇陛下万才。

Fool's Mate 1995年


Last updated: March 10, 2001