Improvised Music from Japan / Seiichi Yamamoto / Information in Japanese

Hoahio / Happy Mail

山本精一

 皆さん、これはまた奇妙な世界観を持ったアルバムが発表されました。私は、実は、このライナーを書いている今現在も、未だなお、この作品を、どのように捉え、どのように文字によって表現し得るか、明確な決定打が出せないでいます。ああ、こんな風に書こうと思うハナから、いやそうではあるまい、それでは、この音楽の本質からズレてしまう、遠ざかってしまうという懸念が生じるのです。そのことは、皆さんも、この作品を聴き進んでいくうちに、合点がゆくのじゃないかと思います。そして、おそらくは、私達が一様に感じる、この作品の、そのような部分こそが、とりもなおさず、"HOAHIO" というバンド (?) の不思議な魅力であろうことは、間違いの無いところなのです。ですから、私は、何とか無力を振り絞ってコトバを探す覚悟です。

 …ああ。でもやはり何だろうコレは。一体どこの国の音楽なのだろう。巷間言われる " 無国籍音楽 " などとも違う。" 無国籍音楽 " といわれるものの多くは、その実、曲の要素ひとつひとつを取り出してみれば、ある特定の国々の音楽を摸したに過きず、それらの組み合わせの妙によって、モザイク様に仕上げただけで、そういうのはむしろ " 多国籍音楽 " とでも言いたくなるものです。その意味では、かえって、HOAHlOの音楽こそ、真に" 無国籍音楽 " と呼ばれるに、ふさわしいものなのかもしれません。

 とはいえ、アルバムを聴きすすむにつれ、朧ろげながら、だんだんと、ある懐かしいような、眩しいような風景が見えてきました。これはどこでしょうか? " 砂漠 " だとか、 " 大きな木 " だとか、 " 鉄塔 " みたいなイメージが浮ぶところをみると、おそらく、 " アジア " でしょうか? しかしながら、アジアの、どこかの国というのではなく、我々モンゴロイドの原風景ともいうべき、" 汎アジア " のイメージ。それは別に琴が使われているからという訳ではなく、無数に飛び交う電子音の中にさえ、" 汎アジア" の音を感じます。決して西欧のそれではないという気がする。" HAPPY MAlL" や " LESS THAN LOVERS, MORE THAN FRIENDS" のような、まるで、アメリカのローカル・ガールズバンドのようなポップでオルタナティヴな曲は、私は大好きですが、これらの曲もまた、音自体は、アメリカやイギリスの、インディー、ギターポップ風なのにもかかわらず、そうした国々の風景を、イメージさせません。この場合、アジアではないようですが、どこか見たこともないような国の川辺や、あるいは、深い海の底に居るような気持ちになります。潜水艦なんかも見えるようです。私は少し変なのでしょうか? … 

 ああ。やはり予想通り、このような小学生みたいな、" 印象雑感 " に終始するハメになってしまいました。けれども、HOAHIO の音楽っていうのは、こんな風に、できるだけのんびりと構えて、好きなようにイメージをふくらませながら、いろんなところへ旅するみたいに楽しめばいいのだと思います。"トリップ・ミュージック" ではなくて、" トラベル・ミュージック" なのです。HOAHIOは、それこそ、様々な国や、海や、宇宙の風物を見せてくれますから、皆さんもぜひ、どんどん色々なモノを見て下さい。私は " 汎アジア" かなんか妙なことを言いましたが、別にロシアでも北アフリカでも、どこでもかまわないんじゃないでしょうか。成功を祈ります。

Hoahio「Happy Mail」ライナーノーツ(AMOEBIC, AMO-HOA01, 1997)


Last updated: March 10, 2001