Improvised Music from Japan / Seiichi Yamamoto / Information in Japanese

トンキから鬼豚(キトン)へ

山本精一

 フリーキトゥンの人たちは、なんかスゴイ買いモノを沢山するらしいけど本当でしょうか? 答、本当です。NYでも、日本でもバッサバサ買いモノをしています。それで、スッゴク上手です、買いモノが。ちょっと目を放すと、もう即ショッピングという具合。

 で、この新しいアルバムは、なかなかシブイと思います。必要最小限の音だけで音楽をつくってるっていうカンジで。ツボを心得てるっていうか、流石ですね。ところで、私は大変お金が好きで、よくお金の夢を見るんですが、その中でも、繰り返し見る夢に、「金亀」というのがあります。天気の良い日にテクテクと小高い丘を歩いてると、切通しの土手のようなところに、ポッカリと洞穴が空いている。で、その奥をのぞくと、何かピカッと光るものが見える。なんだろうと思って中に入ってみると、一番奥の土の上に、でっかい亀が、どっしり座っている。そして、その亀のお腹の下あたりを見ると、大きな小判がのぞいてるんだ。ああっこの小判(いや大判?)が欲しいと思って亀をそお一っと持ち上げて、中の小判をつかもうとしたトタン、亀がパタッと私の手にかみつく!! びっくりして手を放すと、パタリと亀の体が小判の上にフタをするように落ちて、スポーンッていう音とともに地下深くもぐってゆく。いつもここで目が覚めるんですけど、もう悔しくてしようがない。あの亀め、いつか絶対なぐってやろうと考えていますが、また絶対かまれてしまうんだと思うと……。

 フリーキトゥンは、このアルバムで、ラップみたいなアプ(アプローチ)を見せているが、何かスゴク妙なカンジのラップだ。詞もシンプルで、とても素直な音作り。ギャングスターラップなどとは本当に対極にある気がする。気のせいだろうか? キムもジュリもヨシミもマークも、こんなにナチュラルにやっていてうらやましい。私はインテリなのでつい、フリーキトゥンを分析してしまうのですが、フリーキトゥンは、「経済」みたいなものだ。「貿易」とか「政治」ということも言えると思う。もしくは「子猫」かも。「子猫」のロックは、このようにワガママだが、私は全部許せる。ロックは断じて許せないが、子猫のロックは許せる。メリーゴーランドが炎上するようなタイコのビートに、成層圏を漂うフラフープのようなギターリフ、その間を和製ディマジオのような、「渇きモグラ系」のべ一スが、ブンブンうねる。そして、その至上の子猫ロック(経済、政治、貿易)のてっぺんで、軽やかに踊る阪神ファンの私と神崎のおっさん。

 ギターの弦が弾かれる直前の一瞬、ギという烈音、もしくは、ワンタッチアシッドのざわめきは、集中して右耳のウズマキ管を突き刺し、間脳へ直撃する。フリーキトゥンは、夜店のトコロテンのような音で、大型のハリケーンを巻き起こして消える良性の災害だ。

一体全体、こんなシンプルな着想で曲ができてしまって良いものなんでしょうか?

答、はい。

それでは、彼らは、神と考えて良いかもしれないですか? あ、私ラリッてません。

答、さて、それはどうでしょうか? まず、神は、あーたじゃないの。あーたは、他人の全体を代表する総体的な部分ですね? そーすると、あーたが神と考えるかどうか迷ってるフリーキトゥンなどがどういう存在であっても、ええやんけ! そんなんええやんけ! ワシ、心食(心斎橋食堂)行って来るワ。もうハラ減ってハラ減って。

 ボディブロウのように効いて来る、発狂するほど「どシンプル」な曲また曲。こんな簡単なうたがなぜこんなにシミて来るのかと、考えていると、ハタと思い当たるフシ発見!これはコモリうたみてーだ。ママのうたです。ママ。ママー! ママー!! 私はママに甘やかされて育ったので、ママ的なものに大変弱い。そうや! フリーキトゥンは、子猫で、実はママや!ママー!!エーン。

 私は、いい大人のクセに、何も分かってないし、何もできないし、何に対して力を出し切ったらいいのか全く分からないままなので、色んな場面で、なってない。なってないにもかかわらず、皆に頼りにされ、「お兄さん」的に見られてしまうのが苦しい。私はそんな出来た人間じゃない。お兄さんなんかじゃない!もうシドイ!疲れました。

 一から出直しです。努力せねば。物事の中心が自分だなんて、本気で考えてる奴が居るからな。ようしガンバルぞ。宝モノを見つけました。発見したらすぐ、ガムテで留めねば。いつも空中に浮かんでたのに。全く気付かず、いや、気付いていても、ワザと意識の裏側ヘポコッと投げ捨てていた、あの懐しい、ヒナのエサのようなモノ。そのひとつひとつは、キムであり、ジュリであり、ヨシミであり、マークである、フワフワの羽毛に包まれた、グラサンをかけたNYのママたち。傷つき、踏みにじられた俺の野獣の心を癒し、甘えさせてくれるフリーなキトン。今、ちょっとした訳有って、私はヨシミの守り神になっているのですけれど、このバンドで音を出しているときには、私はヨシミに思う存分甘えさせてもらうことにしてる。キムにも甘えさせてもらっている。ジュリにも。なんとマークにも甘えさせてもらっている。ムラタで飲もう!

 音楽で将来メシを食ってやろうと思ってるシトは、とりあえず、このアルバムを超えてみる必要があるが、それはものごっついムツカシイんじゃないかとおもう。なぜかというと、このCDには、音楽をやる上で重要なことが全て凝縮されて入っているからだ。一見ムダというかイイカゲンなものの集積みたいに見える、音のひとつひとつが、実は一切のムダをはぶいてそそり立っていて、しかも軽い。おまけに、ダメ男をペロペロと甘やかしてくれる。30年後ぐらいにまた会いましょう。

フリー・キトゥン「ナイス・アス」ライナーノーツ(タイムボム、BOMB CD-27、1994)


Last updated: March 10, 2001