Improvised Music from Japan / Seiichi Yamamoto / Information in Japanese

エルメート・パスコアル

アスペクト「Musica RocoMundo ブラジリアン・ミュージック・ディスク・ガイド」より

山本精一



Hermeto Paschoal 「A Musica Livre De 」(sinter 1973)

エルメート・パスコアルの音楽世界は、この初期の作品ですでに、ほとんど完成している。このことは、エルメートという音楽家が、いかに強烈な意志を持ち、意味を放っているかを示している。彼はブラジル人であり、もちろん様々なブラジル音楽からの影響もあろうが、ここに表現された音楽は、もはやドメスティックなブラジル音楽の範疇を、はるかに超越したものである。美しくも怪奇な曲構成、現代音楽にも通じる正体不明のパーカッション、ヴォイスの群れ。そしてそれらを絶妙に織りなすゴージャスなメロディ。今ならさしずめ、" 音響派 " のサイトへも充分リンクを張れる。時代を超えた名作だ。



Hermeto Paschoal & Grupo 「Hermeto Paschoal & Grupo 」
(SOM DA GENTE 1982)

冒頭のスパニッシュギターに酔う間もなく、続いてお馴染みの、波紋が静かに広がってゆくような、エルメート節が流れ出してくる瞬間に、早くもカタルシスを迎える。ひとつのメロディが、だんだん辺りのメロディを呼び覚ましながら、幾重にも折り重なってゆく様は、まるでドビュッシーみたいだ。私はエルメート・パスコアルの、特にこのフレージングの妙味に最も魅かれる。一体どうやってあのような旋律を生み出すのだろう。生まれた時から、すでに体内に宿っていたとしか思えない非常に独特な旋律だ。アルバム全体の質感としては、CTIあたりの先鋭的なジャズ/フュージョンの香りもする。



Hermeto Paschoal E Grupo 「Festa Dos Deuses」
(Philips 1992)

私は以前からエルメートと、所謂プログレッシヴ・ロックとの共通点を少なからず感じてきたのだが、この作品はそのことを改めて想い起こさせる。本当、ヘタな「プログレ・バンド」などより、はるかに良質のプログレッシヴなロックの要素を備えている。とはいえ、本作は決して小難しくはなく、とてもポップでダンサブルでさえある。各曲とてもキャッチーで、管楽器をフィーチャーしたスケールの大きい宇宙的な仕上がりになっている。1曲ごとでなく、アルバム全体で1曲という意図なのかどうかは判らないが、通して聴くと、ブラジル産のSF映画を見たような気分になる。例によって鶏は鳴きまくっているが。


Last updated: July 7 , 2001