Improvised Music from Japan / Seiichi Yamamoto / Information in Japanese

CDレビュー

山本精一



ラテン・プレイボーイズ「ラテン・プレイボーイズ」 (ポリドール DOCD-1143)

このアルバムはものスゴク面白い。BECKを買った人は絶対にこの作品も好きになれるから買いなさい。今年出たCDの中でも屈指の傑作だ。何じゃこりゃ、う-ん。とにかく音が痛快で、ドラムとか打楽器類が全部コモったような音にしてあって、ムチャクチャカッココイイ。メロディ・ラインもインドネシア風あり、中近東風ありで、アジアっぽい。音が " コモってる" というのは重要なポイントというか、このアルバムの核になっているんじゃないか? コモってて、しかもカッコイイ音っていうのはなかなかありそうでないものだが、この連中は見事それを見つけた。ブックレットに写っているスタジオの録音風景を見ると、スタジオ内でさまざまな実験=遊びがくり広げられたことがわかる。ギターのフレーズにしても、トーンにしても、とにかく普通じゃないけど絶妙だ。こうした絶妙さもスタジオ・ワークの中でバッチリ発明されるものと思う。しかしながら、どう考えてもわからないのはこのアルバムが、あのロス・ロボスのメンバーたちによって作られたということだ。あの連中はなんとこんなことができるのか!?

ギターマガジン1994年8月


トータス「TNT」(徳間ジャパン TKCB-71338)

絶妙だ。そして微妙である。一般リスナーのみなさんは、このような音を、いったいどんな風に捉えるのだろうか。何気なく出してるように聴かせて、実は限りなく選び抜かれた音の数々。リズムのズレや、ノイズひとつ取ってみても実に巧みに計算されたものである。この音はもう絶対にここにしか存在できないというところに、キチンと配置されてゆく。音の本質を見極めることによって生まれる新しい音の発明と実践。トータスのおもしろさはまさにそこにあるといっていい。今作は、さらに加えてメロディーの妙もあって、とても安らぐが、この安らぎは退屈を誘うようなものでは決してない。よい作品だ。

Bounce1998年3月



ケニー・ホイラー、リー・コニッツ、デイブ・ホランド、ビル・フリゼール「エンジェル・ソング」(ポリドール POCJ-1367)

ECMで多くのアルバムを録音しているというケニー・ホイーラーの曲に、レニー・トリスターノのユニットなどでお馴染みリー・コニッツ、デイヴ・ホランド、そしてビル・フリーゼルという非常に興味深いメンツが集まって新たな生命を吹き込んだ本作は、派手さはないが、とても滋味に富んだものに仕上がっている。トランペット、アルト・サックス、べ一ス、ギターというドラムレスの編成でのインタープレイは、演奏者の力量が大きく問われるものだが、この人たちはさすが、その辺をいとも簡単にクリアしていて、その上けっこう遊んでいる。無駄な音がまったくないのに、聴いていて疲れない。リラックスした気持ちになる。とりわけ、ビルの絶妙のコード・ワークが素晴らしい。

ギター・マガジン1997年4月



ベック「ミッドナイト・ヴァルチャーズ」(ユニバーサル MVCF-24060)

BECKの前作は、かなりアコースティックな、シンプルな音作りだったが、今作は、派手である(笑)。BECK流R&Bなんて謳ってあるが、プリンスみたいだと思った。ディスコっぽいというか。彼自身、今作ではフィジカルなイメージをコンセプトにしているようだがそれは一応成功してるかな? う-ん、やっぱり少し無理があるような気も。BECKが打ち出せるセクシャリテイというのは、例えば、JBやプリンスなんかとは異質な " 少年愛 " 的なもののはずだが、ここではけっこう王道のセクシー路線が展開されていて、その部分に違和感がある。音的には、前々作の『オディレイ』からの流れという印象だが、全体を通して『オディレイ』の時のような、新鮮な発見はなかった。

ギターマガジン1999年12月



パット・メセニー「Trio 99 → 00」(ワーナー WPCR-10647)

うわあ、ジャズだ!バリバリのジャズ!スタンダードをメセニー流に仕上げている。流れるようなフレージング、美しい音色。見事です。録音も、まるで50年代あたりのセッションを思わせるような、少しこもったようなそれでいて広がりのある " 音" で録ってある。おそらくワザとだろうな。とにかくこれはカッコイイです。やっぱりメセニーはこうでなければ。以前、デレク・ベイリーとやったようなフリーは、この人には合わない。ドラム、べ一ス、ギターというシンブルなユニットながら、彼独特の空間をうまく使った音世界は、十分に表現されている。こうしたちゃんとしたモードの中でこそ、逆に彼の独創的なアプローチというのは光るのである。久々にヘッドホンを外して聴きました。

ギターマガジン 2000年3月



トータス「スタンダーズ」(徳間ジャパン TKCB-72059)

シカゴ音響派の総帥、トータスの4枚目は、独特の音響的なこだわりに加えて、随分と " 熱 " を帯びた作りになっている。オリエンタルなフレーズやリズムもところどころ顔を出したりして、かなり人なつっこい。音響派のアーティストたちは、皆どんどん抽象度を高める方向へ向かって、最近では何か " 高踏派 " というか、現代音楽のある部分と非常に近い印象を受ける作品も出てきている。そんな中、オリジネイターである彼らが今作で提示してみせたエモーショナルな展開は、当初は単なる音の遊びだったに違いない音響的アプローチが、結局はコンセプチュアル・アートに帰結してしまうことへの警鐘の意味合いなどもあるように思う。1曲目のサイケなインプロなんかまさにそういう意図を感じた。

ギターマガジン2001年2月


Last updated: March 10, 2001