Improvised Music from Japan / Discography / doubtmusic

梅津和時 CD『Show the Frog』ライナー・ノート

梅津和時

バス・クラリネットという楽器が好きだ。音色がどこかとぼけていて暖かみがある。そっと吹けばチェロのような深みがあり、思いっきり吠えれば、近所の犬どもが驚いて一斉に遠吠えするほど野生的な雄叫びを発する。どうにも扱いにくいこの楽器を屈服させようと、孤軍奮闘したことが私のジャズ的人生の始まりに結びついた。サックスを手に取る2年ほど前である。34年後の今日、やっとこの楽器のソロが出せることには感慨深いものがある。それでも未だにこの楽器を征服したとは言いがたいが、自分なりにこの楽器の可能性を追求して来たつもりではある。とりわけアボリジニのディジュリドゥやアイヌのムックリからの影響は拭いがたい。そしてもちろん、この楽器の先駆者であるエリック・ドルフィや、サーキュラー・ブレイジングの神様ラサーン・ローランド・カークといったジャズの先人達に少しでも近づけたらと…。いやいや、それはまだ遠い先の話ではありますが。