Improvised Music from Japan

tamaru『祝祭』ライナー・ノート

  1. 沈める・・ (12:52)
  2. 野に影 (9:00)
  3. 多角形室で (10:34)
  4. 光線祝祭 (7:52)

この作品集は、波形生成したサイン波、マイク録音により取り込んだ具体音、私の過去の制作内容から取り出した素材などの音源に対して行った、逆相成分の加工をはじめとする音響実験の成果となっている。作業の全ては digidesign protools 上で行われた。結果として、これらを扱う私の手つきと偶発的な要素が、音の奇妙なふるまいやユニークな表情を生じさせているのだが、そうした私の作業とは一体どのようなものなのか。音を使って何かを語る作業ではなく、音になお語らしめるための作業であることは間違いない。

「沈める・・」は、変化するサイン波のコラージュのみで構成されている。それらの変化は、オリジナルの波形を打ち消す形に重ねた逆相成分をさまざまな方法で変容させていくことから得られた、多分に予想外のものである。

「野に影」は、弱音性の表現をテーマとした未発表の過去作品から、明滅するサイン波などの要素を取り出して再構成した。新たな素材および加工の付加と音量バランスの変更を経て、当然ながら以前のテーマとは無関係な作品となった。

「多角形室で」の中心となっている音源素材は、オイルヒーターから発生する微細な音を収録したもの。これはオイルヒーターの内部で発生した水蒸気が、熱せられた油の上に水滴として落下し、一瞬にして蒸発する際に生じる音である。

「光線祝祭」は、某海外レーベルのコンピレーションCDに提供した作品を素材とした。オリジナルは屋外音にヴォコーダー的な変調を加えた40秒の小曲だったが、紆余曲折を経て大きくその姿を変えた。「沈める‥」の制作において追求した逆相成分の加工手法を応用している。

この作品集は、部分的に10kHz以上の高音域を強調しているので、聴かれるオーディオ環境によってはこれが歪みとして再生される可能性がある。また、低音域の質感と動きにも特色があるので、比較的大きなスピーカーでラウドに聴いていただければ幸いである。

tamaru