Improvised Music from Japan / 10-CD boxed set

ブレット・ラーナー コメント

(a) ブレット・ラーナー -- Improvisation 1 (6:50) (Disc 7, Track 1)
(b) ブレット・ラーナー -- Improvisation 2 (8:21) (Disc 7, Track 2)
(c) ブレット・ラーナー -- Improvisation 3 (6:08) (Disc 7, Track 3)
ブレット・ラーナー(箏、ラップトップ・コンピュータ)
録音:松本渉、1998年11月2日 上尾「バーバー富士」でのライヴ


このCDセットのために、私の現在を伝えるような最近の演奏よりも、むしろいくぶん懐かしい演奏を提供することで、いくらか特別な選曲をしたように感じます。録音物を世に出すことはいつでも過去を振り返ることになりますから、この膨大な記録の集約に参加する機会を、不可能を可能にしようと試行するのではなく、私にとって個人的に意義深いものを提示することに使いたいと思います。3つの演奏はどれも、私が沢井一恵先生に師事する為に日本に住み始めてから1年3ヶ月後の、初めてのソロ・ライヴでの録音です。これらの演奏で明らかに聴かれますとおり、その年の私の即興演奏は、専門的技術が大変に強調されたものでした。しかしながら、そのライヴは理由はなんであれ、そのような演奏をした最後の機会となりました。あのような演奏をその後数回試みましたが、まったくうまくいきませんでした。どこまで意識的な決定なのか、あるいはもっと人間的な変化なのかはわかりません。ただ、ここに表れている音の重なり方と、現在の私の演奏様式の大部分を構成するものとを並べてみると、これらの演奏は、私にとって重要な変化点だったということが明らかになります。他にもこの時に初めて表れているものが、いくつかあります(実ははじめの2曲は、1曲の長い即興演奏から、編集によって切り分けられたものです)。箏の長辺方向へゴムをあてて擦ったり、箏の音をラップトップ・コンピュータで加工したりすることなどです(これら初めての試みにより、この3曲は個人的に歴史的な価値を持っています)。それにしても、これらは4年の時を経てもなお、かなり良いものに思えます。その3曲目を聴くたび、これを本当に自分が演奏したのかと驚きます。しかし、実際に私自身が弦をいっぱいまで緩めて演奏した即興です。あのライヴの機会を下さったバーバー富士の松本渉さんと、今回この録音を発表する場を与えて下さった鈴木美幸さんに感謝します。

ブレット・ラーナー 2001年10月


Last updated: December 7, 2001