ピ〜とか、ギ〜とか、ガ〜とかいう電子音響ばかりのレーベル、メゴから日本人アーティストのアルバムが初めてリリースされる。しかも驚いたことに日本語をフューチャーした歌もの。でも、そんなことよりなにが凄いかというと、歌い手の存在感の強さ。「静かな雄叫び音楽」と本人が言うように、凍りついた静謐なエレクトロニクスの中で響く、可憐で、残酷で、美しい声は、アネット・ピーコックやブリジット・フォンテーニュを想わせる。でもポップに感じるのが不思議なところ。少女度の高さゆえか?
ネオン・ライトに照らされた通りを少女は歩いていく。歌を口ずさみながら。激しい恋に焦がれ、美しい光景に焦がれノ。彼女の音楽から感じるのは「想う」ことのたいせつさ。ほとんどの音楽ができあがってしまった方法論を選択することによって作られ、クリシェと化してしまったかのような今日この頃。こういうシンプルな「想い」から生まれた音楽をとても新鮮に感じる。
『ミュゼ』Vol. 31(2001年5月発行)掲載